Milと0

ダンディな人を求めて30歳で日本を旅立ち、ジョージクルーニー夫と出会いメキシコに落ち着く。メキシコ生活8年目。

「死ぬまで生きる日記」感想

自分と感性が一番似ている友人からおススメされた本。この本の感想を誰かと意見交換したい気持ちになった。

自己啓発本が嫌い。意識高い系も好きじゃない。だから読むのは小説か生活や文化に関すること。題名から自己啓発本を想像し内容を全く知らないまま、特別な友人からのおススメの1ページを開くことにした。

死ぬまで生きる日記/土門蘭

 

死ぬまで生きる日記

死ぬまで生きる日記

  • 作者:土門蘭
  • 生きのびるブックス株式会社
Amazon

10歳の頃から定期的に「死にたい」という発作が25年間続く著者。この苦しみから解き放たれたくて感情がどこから来るのかを紐解いていくカウンセリングの物語。

“死にたい”という発作

世間に家族感が漂う季節は特に死にたい発作が現れる。予期せぬ発作が現れることへの恐怖、誰かを傷つけてしまったという思い込みから来る不安から朝現実を確認することが怖い、結婚しても好きなことを仕事にしてもこの発作が収まらない。彼女は35歳になり、定期的に起こるこの発作が普通ではないとオンラインカウンセリングを受けることとなる。

私だって死にたいと口にしたことは何度となくある。テスト前や仕事で失敗した時など消えてなくなりたい感情に陥っても死にたいという感情に置かれたことがない。生きている意味を探しもしないし、死にたいと思うこともない。ネガティブでいることに無頓着でいられるように訓練中だ。心にアンミカを!っていうやつ。だから人に傷付けられるよりも人を傷付けてしまうことの方が何万倍も怖い。著者のように死を思いながら生きている人が存在することを人生において知っている。

問題は解決しようするから問題。解決しようとしなければただの現象である。

どうにかしようと思うと気持ちが揺らぐ、眠たいのに眠れない夜にこんなことが起こりやすい。どうにかしようとしないで、ただ今起きていることを事象として受け容れることを心理学ではマザーリングという。何か問題が起きれば解決したくなるのが日本人の性。問題=ネガティブなもの。著者は発作が来るとその波が一時的で収まることは分かっているが、渦中で死にたい感情と闘い続けている。

同じくしてPodcastのとある番組で「千鳥のコントで『開いとる店は開いとるし閉まっとる店は閉まっとる』これって人生の真理で全てに言えることだと思うんです」という視聴者からのメッセージを聞いた。とてもシンプルなことだけれど、この発想は心の筋トレにおいてだいぶ効くトレーニング。私もメキシコ人に鍛えられた。日本でどれだけ他人に期待をしながら生きてきたかに打ちのめされ、他人に期待しないと他人からも期待されていないと感じられて気楽になれる。舌打ちをする毎日を送っている方がいたら、メキシコ生活をおススメします。

心を開く相手は身近な人でなくてもよい

カウンセリングって、心理学のプロって凄いなと思ったのが一番の感想。寄り添いながら本人に気付きを与えながら心を紐解いていく。そして気付きには”相手に響く言葉”が必要。一度も会ったこともなく、PC画面の先にある顔以外の情報がない相手と心を開いていく様に感動すらした。幼少期友達が誰もいないぼっちだった経験から初めて友達が出来た時に人生が開けたと思えた。ゆうこちゃんありがとう!(今は小学校の先生をされているそうな)反動で友達はより特別なものとして捉え、心を開いて何でも話せる相手だと、逆を言えば自分を理解しようとしてくれる相手は家族と友達しかいないと思い込んでいた。だからこそ目から鱗。自分の悩みに寄り添ってくれる他人がこの世の中にいる。そして私にとって御守りになり得る気付きだった。

人には寄り掛かりたくない、夫ですら。私は自分の足で生きていないと不安が降り注ぐ。自分の精神状態がどのような状況だと通常運転でいられるかなんとなく分かっている。あくまで私の40年で経験してきたことがベースである。これから未体験の喪失感や憤りを感じるようなことが起きたら私はどうなるのだろうか…と漠然とした不安も人なりにある。そんな時に霊感商法でもなく宗教のお誘いでもなく、きちんとしたメソッドで丁寧に私の心を和らげてくれるプロがいる。そう思うと未来への不安が薄まっていく。この本を読むまで心理学の力を穿って軽視していたことに気付かされる。

この本は著者の息苦しさを描いているのではなく、心は解きほぐしていくことが出来るというメッセージが書かれている。自分と対面し続けている筆者ならではの言葉と心を紡ぐ様に感動した一冊。一生懸命生きたい。