Milと0

ダンディな人を求めて30歳で日本を旅立ち、ジョージクルーニー夫と出会いメキシコに落ち着く。メキシコ生活8年目。

自分軸で生きること –おすすめの本・青木さやか著「母」–

大家族出身。“父母が他の兄弟を贔屓している“などと本気で思ったことはなかったし、興味がありませんでした。私だけでなく、他の兄弟もきっと。親からの愛も親への愛も一度も疑ったことはありません。

幼い頃、家族のルールを守らず両親に怒られた時に言われた忘れられない幾つかの衝撃な言葉はありますが、それらが今尚私を苦しめることはありません。(そもそも私が悪かったですし。)私は日本感覚からすると親大好きレベルは高レベルです。

 母/青木さやか

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85点のテストを見せれば「どこを間違えたの?」を言われ、「母に褒められたことがない」と母親への憎悪を募らせ、彼女の人生を彼女自身でがんじがらめにし続けてきた。仕事で成功すれば、結婚をすれば、出産をすれば、母親以外の誰かに自分の孤独を埋めてもらえる。そう思ってきたけれども、違かった。母親から与えられた負の感情は母親と対面することでしか軽減することは出来ないのだ。

母親との話だけでなく、様々な出会いの中で母親への憎悪を解き放すヒントを与えられ、固定観念に縛られず自分軸で人生調整中の13話のエッセイが書き記されている。

感想

鈍感に生きてきたことで救われてきたことの方が多いと思っていますが、私は誰かの言葉を自分の身体に染み込むほど真剣に受け取った経験がないことに気付かされました。その瞬間その瞬間を切り取ってスクラップしてこなかった人生。

彼女の真面目さがこのエッセイ小説には現れています。とりあえずその場は「はいはい」と生返事をして、その後反芻と解釈を丁寧にされる方だと思いました。彼女の場合は他人の言葉に耳を傾けてしまい過ぎた結果、他人軸で生きて辛かった身体のSOS。周囲の言葉から得た人生を楽にする気付きがこの本の至る所に見えます。そういう気付きをこんな風に言葉に出来るのが彼女の才能なんだろうな、と綴られている言葉に惹き込まれ、2時間程度で読了してしまいました。素晴らしい一冊でした。自分の孤独や不安を軽減出来るのは結局自分でしかない、自分の心で決めて自分で行動するしかない。当たり前なんだけど、人生は自分の選択の積み重ね。

それにしても、彼女が娘を出産し実母が初めて娘を抱いた時に強く思った感情「私の大事なものに触らないで」はショックを受けました。どれだけ拗らせた関係だったか語られている一文。冒頭に書いた通り真逆の私には感じることのない感情。

それでも家族の在り方や孤独の吐露をオープンにはし難いもので、彼女の言葉には嘘がなく、読んだ時に寄り添いたくなるおすすめの一冊です。