Milと0

ダンディな人を求めて30歳で日本を旅立ち、ジョージクルーニー夫と出会いメキシコに落ち着く。メキシコ生活8年目。

メキシコ雑貨から考える職人の価値

あの時は若かった…と思うことのひとつに「似たようなデザインなら安いものを買おう」という大量生産大量消費社会に溺れた浅はかな過去の消費行動があります。

かつて"Factelier"という全てのアイテムを日本の工場で作り販売するというファッションブランドで働いたことがあります(長期一時帰国で)。中国やアジアで質をさて置き安い人件費で働かせて作る服とは真逆で、失われつつある素晴らしき日本の工場の職人技を継承していくコンセプトのため良品だけど値が少しはります。長く愛用して欲しいからデザインはシンプル、でも手に取った瞬間から質の良さが分かりました。何人ものお客様が何年後かのご自身を描きながら購入してくださって嬉しい限りでした。

先日メキシコのインテリアブランド"Balsa"のエキシビジョンへ足を運んできました。デザイナーが直々にブランドの誕生から制作の説明をしてくれました。

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彼らのアイテムは"ラタン•藤"を使っています。日本にいる時は籐製品は珍しくもなく高価なイメージもありませんでした。どの家庭にもラタンチェアやラタン籠など必ず何かしらあるでしょう。

ラタンは熱帯地域のジャングル(インドネシアやタイ)で生産され、メキシコでは自生していません。全てアジアから輸出しています。メキシコでは柳やヤシで作られる籠製品などがメジャーです。ラタンはそこまで有名ではないため、扱える職人が少ないとのこと。ブランドを立ち上げた2人はやっとのことで職人を見つけ、試作品第一号を作ることに漕ぎつけました。数週間を経て出来た試作品のラタンチェアは素晴らしい出来でした。しかし職人は出来上がりを納品する際に彼らへ一言「これが最初で最後だ」。それだけラタンを手で丁寧に編むことが難しく時間が掛かり儲からないことを職人の一言から読み取ったそうです。しかし神様はBalsaに命を吹き込ませたかったようです。落胆する彼らを見た職人の息子達が「僕たちにやらせて欲しい!」と挙手し、ブランドが走り出します。2020年にブランドが誕生し、今では25人の職人が支えています。

試作品第一号となったデザインのラタンチェアは職人3人がフルタイムで3週間働いて完成します。座ってみるとこのチェアがいかにこだわって作られているかが分かります。制作過程を知り、実際に家具を知るとこれは最早アート作品と言っても過言ではなかろう。デザイナーの名前は残っていくとしても、職人の名前はどこにも刻まれない。職人たちがその地位を求めているのか分からないけれども…デザインが無ければ作品は生まれないからアートとはそういうものだと思う反面やはり職人の価値に寄り添いたい気持ちになりました。

メキシコは安くていいものがないから、良品は高くて当たり前。逆に日本育ちだと安くていいものが簡単に手に入ることが当たり前になっていて、メキシコで家具を買った時高くて驚いたのです。でもメキシコの輸入力に加えこうやって人の手で作られているドラマを見ると妥当な値段なんだと理解が出来ます。今回のインテリアデザインだけでなく、多くのメキシコ雑貨が様々な職人の手で作られて生活が掛かっています。手に取って気に入ったものがあれば、少しそんなことを想像しながらHOMEに迎え入れたいと思います。

世界中の家紹介の番組やYouTubeを見ているのですが、日本の洗練されたマイホームのインテリアって小物までおしゃれで、モノを選択する妥協が一切見えません。マイホームというより美術館じゃん!っていうくらい細部までこだわりが溢れています。むしろこだわりしかありません。メキシコでは完璧な選択が出来ないだろうと、まあまあの気持ちで買うこともあります。それでもきっとこだわる人はイメージしているものに出会うまで年単位で待つことができるのだと思います。ここでも私のせっかちが勿体無い方に始動しているんだと気付かされました。せっかちってあんまり人生メリットありませんよね…。

子猫に癒され、マリーゴールドがReformaにやってきて死者の日をようやく感じた先週末。

 
 
 
 
 
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